本日は,散歩の途中で楽器屋によって,本を買ってきた.村上隆「バッハ《インヴェンションとシンフォニア》創造的指導法」という本だ.まだ読了していないが,「教育者としてのバッハ」について書かれているだけでなく,なぜこれほどまでに,インヴェンションの演奏にはバリエーションがあるのかと言う,自分が感じていた疑問に対する回答が書かれていた.
簡単に言えば,バリエーションが多いのは,それはそもそも教育者としてのバッハが意図したことなのだ.インヴェンションは単なる練習曲ではなく,作曲のイ
ンスピレーションを与えることも意図しており,そのために楽譜上での表現が意図的に曖昧にされている.演奏者は自ら,その曖昧な部分を補わなければならない.つまり作曲を促しているのだ.
音楽に命を与えるためには,演奏されなければならない.自分はそう思ってきた.しかし,ある音楽が時代を超えて演奏され続けていくためには,生命と同じく,その音楽に進化の可能性や時代(環境)への適応能力が必要なのだ.バッハは恐るべき事に,意図的にそれらを曲の中に仕込んでいた.
バッハの音楽に見られる数学的構造や建築的技法,「十字架」「BACH」といった文字やシンボルの埋め込み,自己参照関数的な,複雑系やオートポイエーシスをイメージさせる様式.それだけではなく,バッハは音楽の中に「進化と適応」の種をも仕込んだ.
音楽を生命化したバッハ.まったくもって恐るべしである.
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